哀愁 ―もの悲しいこと。うら悲しいこと。― 悲しみを忘れて人は強くなるらしい。誰かから聞いた。 じゃなきゃとっくにみんな死んでるとも。辛すぎて、苦しすぎて。 でも、ソレは見方が少し変えるだけでどうとでもなる。 と、僕は思った。 「全然良くないですよ」 彼女が言った。そういえば居たんだったとも思った。 そしていつの間に一緒に帰るようなカタチになっていたのかという疑問も浮いた。 つまり何も考えていなかった、あるいは逆に何かに考えすぎていたというコトで。 それを少しでも誤魔化す為に彼は一応返事をした。 「何が」 疑問系の言葉だったコトが少し問題アリだったが特に誰も気にしなかった。 ただ乾いたコンクリートが2人の存在を音で表しているだけで。 何も、ない。何も。 「その顔」 「んなコト言われても整形でもしない限りどうにもならないだろ」 「あら、別に整形なんかしなくても喜怒哀楽を表すだけで人の顔なんか簡単に変わりますよ」 そしてあなたはその中のたった1つしか表してくれないんです、と。 「・・かもな」 「自覚アリならもう少し努力したらどうです?」 そんなコトに努力するくらいなら死んだ方がマシだ、とまでは言えないが。 苦手であるコトには変わらなかった。努力自体も。 だいたい想像するだけで気持ちが悪い。喜怒哀楽がハッキリしている自分なんて。 「人格否定発言に等しい」 「慣れているでしょう?」 「かなり」 「ならいいじゃないですか」 「そんなの全てにおいて言えることだろ」 彼の表情があまり変わらないコトなんて、周りの人間全てがもう"慣れている"。 だから誰もそのコトに対して何も思わない。訊かない。 でも、彼女は違った。今彼の隣にいる彼女は。 「ほら、やっぱり全然良くないですよ」 「・・もっと笑えとかどうせその辺のコトを言うんだろ?」 「や、ソレはいいんです。そんなコトになったらこっちが気持ち悪いです」 どんなに失礼なコトでも彼女はさらりと彼に言う。 この辺りもまた他とは違うトコロ。 ・・趣味が悪いかもしれない、と彼は自分に対して少し思った。 「・・結局、何が言いたい」 先ほどから表していた彼の"哀"が更に強くなったようにも感じた。 彼は常にコレを表していると言ってもいい。 そして彼女はそんな彼と常に一緒にいると言ってもいい。 そんな彼女は「んー、そうですね〜・・」と指を顎の辺りに持ってきている。 何やら思いついたらしい。彼的にはそんな行為をするくらいなら最初から何も思うなと言いたい。 「悲しいコトがあっても笑え、とまでは言いませんが」 彼女は顔を横にいる彼に向けて、言った。 "哀"のカケラもない表情で。 「次に起こる楽しいコトを期待するくらいはいいんじゃないでしょうか」 と、私は思うのです。彼女は少し恥ずかしそうに言った。 コレはあくまで彼女の考え方であって。 何が正しいなんて誰にも判らない。また、正解はきっと何処にもない。 けれども、彼は言った。 「・・十分気持ち悪いだろ」 「私も今ちょっと思いました。ぁー・・もう流しちゃっていいですよ」 自分でもよく判りませんし。そう言って彼女は彼よりも少し前へと進んだ。 別に何がどうなったワケでもない。何も変わらずにただ周りは乾いている。 けれども、彼の"哀"は何故か薄れていた。何故か。 『哀愁』おわり。
あとがき 2005.03.15 中途半端だなオイ。スゴイ久しぶりに書いたよ。何か新鮮。(´ー`) これぐらい短めの方が楽しい気も。そしてやっぱりひよのサンは鳴海の女神様タイプで。 とりあえず、コレが入試の終わった次の日の文章です。・・現実逃避系?? *お手数ですがメニューからお戻り下さい。