―大気中の水蒸気が高所で冷気のため凝固し、水滴となって落ちてきたもの。―



自然の成り行きに誰一人として逆らうコトは出来なくて。
所詮その中で人間の出来るコトなんざ傘を差してソレを少し遮るコトぐらい。
そんな昼にこの男女2人も例外ではなく。



「びっしょびしょになっちゃいましたね」
「今タオル持って来るから待ってろ」
「お願いしますねー」



彼の家に走りこんだ。突然急激に雨が降ったせいで。
水を吸った制服を彼女が玄関で絞る。ポタポタと。
彼がタオルを持ってきてくれた。



「ほら」
「どうも。ぁ、お邪魔していいですか?」
「この状況で訊く言葉か?」



上がる彼女。そして、リビングへ。もう何度彼の家に来たのか判らない。
そのときによって理由は様々だが、雨宿りの為だなんてコトは初めて。
一応傘を差していたせいか、頭部の濡れ具合は大したコトはなかった。
それでもやはり気持ちの良いモノではなく、彼に訊ねた。



「あのー・・」
「何」



自分の服を上から拭いてくれている彼を見上げながら。



「グショグショで気持ち悪いんですケド・・」
「姉さんの服を後で出す」
「や、あの・・シャワー借りていいですか?」
「どうぞ」



そしてぱっと彼女を放した彼。そしてすぐにバスタオルを渡された。
この辺りはとても手早くて感心してしまう。
そんな彼を見ていると少しだけイタズラ心が出てしまうのが年上の彼女。
途中までは風呂場へと向かっていたのに、洗濯物を取り込んでいる彼にこんなコトを言った。



「鳴海さん」
「まだ何かいるモノがあったか?」
「忙しそうですね」
「見りゃ判るだろ」
「一緒にお風呂入りませんか?」



雨のせいだろうか。気がおかしいかもしれない。彼女は。
そんな彼女が彼と少し離れた距離でさっきの言葉を放ったので。
しかし彼は表情の揺らぎも何も見せずに作業を続けたままこう言った。



「誘うんだったらもっと上手く誘え」
「ちょっと言ってみただけですってば」
「どうでもいいから早く浴びて来い。風邪ひくだろ」
「はーい」



とてとてと走って行った。一体何だったのだろう?と彼は思いつつ、
濡れた洗濯物をハンガーにかけ、部屋のあちこちにぶら下げる。

作業が終わり、まだ残っている家事に追われている中、彼女に呼びかけられた。



「鳴海さーん」



タオル一枚で体を覆っている彼女に。
しかも近付いてくるし。普段と全く同じように。違うのは髪も体も濡れているコト。
唯一髪が解けてなく、いつものお下げ頭であるコトが救い。



「・・今度は何だ」



片手で頭を抱えつつ、呆れながら彼女の呼びかけに答えようとする。
もう全く彼女が何をしたいのかよく判らない。
雨で湿気は多いし、最悪だ。



「服貸して下さい。出来たら鳴海さんので」
「何で」
「だって・・服着ないでずっとこのままでいろと言うんですか?」



このまま。つまりほぼ裸体。
本能的には"このまま"を望んでいるのかもしれない。
人間は本質的に"子孫を残したい"という本能イコール"性欲"が遺伝子に刻み込まれているのだから。

生まれて初めてDNAを恨んだ。ついでに神も。



「・・何で俺の服を希望するのかと訊ねてるんだ」
「何か元気ないみたいですケド大丈夫ですか?」
「誰のせいだよバカ娘」
「ぁ、雨降ってると気が滅入ってきますよね。そういえば」
「・・で、何で俺の服を希望するんだ?」



もう諦めた。彼女は彼が何を言いたいのかがよく判っていないらしいので。
や、もしかしたら限りない低確率で判っているのかもしれないが
話をつなげてくれない。だから本題に戻した。いつものやりとり。



「鳴海さんの服大きいじゃないですか」
「そりゃあんたが着たらそうだろうよ」
「何怒ってるんですか」
「別に。・・で?」
「で、大きめの方が気持ちいいなぁ〜っと思いまして」
「・・・・・・・・」



しばらく彼女の顔を見た後、彼が自分の部屋へ入り、
ちゃんと持ってきてあげた。上下。適当な白のTシャツとジーパン。
タオルを渡したときよりも少し乱暴めに彼女に渡す。



「・・ほら」
「ありがとうございます。ぁ、ジーパンはいりません」
「何で」



今日はコレばっかだなとか思いつつ、また訊ねる。
彼女の行動一つ一つに訊ねている気がしないでもない。
と言うか訊ねないと先に進めないからどうしようもない。
そんな彼女が好きな彼もどうしようもない。



「ジーパンって長時間履いてると足疲れちゃうでしょう?座ったりすると特に」
「・・まさかずっと下はそのままでいるつもりじゃないだろうな」
「や、下着は仕方がないのでさっきまでのモノを身に付けておきますよ」
「当たり前だろって言うか・・ぁー、やっぱもういい・・」



苦悩症候群。さっき神を恨んだのに現在只今神頼み中。
そうでもしないとやっていけない。色々と。

正直、コイツ何なの・・?みたいな。



「鳴海さん?」



本日3度目の呼びかけ。まだ何か言うと思うと疲労感からかGを感じる。
雨のせい?や、コレは確実に目の前でタオル一枚に包っている彼女のせい。
でもこんな彼女にしたのは雨のせい。発言はノーコメントで。
また訊ねなければならなくなった彼。もういいよってぐらい。



「何」
「もしかして意識とかしちゃってるんですか?今さら」



そんな下からの目線で図星を言わなくても。イジメに近い。
ココで何かしたら悪いのはこっちになるワケだし。世の中狂ってる。
何とか言葉を返した。



「・・質問」
「はい?」
「このまま服を十分に着ないままでうろついていて色々とゴタゴタがあるか
 今すぐ服を十分に着てフツウに過ごすのとどっちがいい?」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・ジーパンも貸して下さい」
「当然」



借りた服を持って別の部屋へ着替えに行く彼女。
実際にはその場で着替えそうだったのだが彼が"質問"と発したらそう動いたのであった。
よくよく考えてみればゴタゴタがあっても雨のせいにしてしまえば何もかもOKなのだが。
こうして過ごせるのも雨のおかげなのでそんなワケにもいかない。



「・・雨って面倒だな」
「洗濯物とか乾きませんもんねー」



既に着替え終わり、彼の近くにいた彼女。
や、雨よりもあんたの方が面倒だから。

そう言ったら、きっと彼女は怒るのだろう。晴れでも雨でも変わらないあの表情で。




『雨』おわり。


あとがき。2005.02.01 「ソコはDNAとは言わない」とかそーゆーツッコミは無しで☆所詮15の頭ですから。 専門的なコトを求められても困りますお客さん!(は。 つーか照久の文章って造語多いよ!意味不なコトばかりでスイマセン。 意味は適当に想像してやって下さい。きっとソレが正解です★ *お手数ですがメニューからお戻り下さい。