「と、言うワケでお触りは1週間禁止ですよ鳴海さん」
「・・・は?」



またしても彼が部室の扉を開けた瞬間に言ったひよの。

2人の会話はたいていこんな風にいつも始まる。


一応、どんなときでも落ち着いてひよのの横に座り、話を聞いてあげる歩。



「最近の鳴海さんはすぐ調子に乗って私に手を出してきますからね。お触り禁止令を出そうかと」
「・・・それを守れたら?」
「は?」
「俺が守れたら何々、俺が守れなかったら何々、みたいな賭けにしないか?」
「いいですケド・・先に賭けるモノ決めておきません?」
「あんたは何するんだ?」
「んー・・そうですね・・・じゃあ、パフェ一杯で!」
「じゃあ俺が守れたら・・・」



歩がひよのの顔、と言うか目をじーーっと見る。流し目で。

ひよのは歩のこの表情が半端無く苦手で。


とにかく、あたふたしながら返すしかいつも方法は無い。



「せ、せめてチューぐらいじゃないとダメですからね!!」
「・・1週間でそれかよ。そんなんじゃせいぜい3日だな」
「なっ!!・・いいですよ、じゃあ3日でチューですね。」



1週間守られてその先をやられても困るひよのはそう言った。



「でもベロチューはダメですからね!!!」
「・・ベロチュー・・・?」
「鳴海さんったらチューに紛れてたまに舌も入れてくるじゃないですか!!ダメですよ!アレは!!」
「何でだよ」
「やられてる方はとっても苦しいんですよ!!やった後はフラフラになるし・・」
「ふーん・・」



歩は笑みを含みながら微妙な返事をした。



「だ・か・ら!絶対ダメですよ!!ただのチューだけですからね!」
「・・じゃあ俺帰るから」
「は!?来たばっかじゃないですか!」
「つーか3日間来ないから。じゃあな」




ばたんっ




「ぇ!?ちょ、ちょっと・・!!」


彼は本当に帰ってしまった。





























もう我慢しなくていいよ。





























「で、明日で終わりか・・歩も結構やろうと思えばやれるんやんか」



あの賭けが始まってから2日経った部室には


歩の姿は無く、その代わりに火澄が席に着いていた。



「と言ってもたった3日なんですケドね・・お茶どうぞ」
「あ、どうも」
「・・家ではどんなカンジに過ごしてますか?」
「んー・・そうやなー・・・」



出されたお茶をすすりながら火澄が言った。



「変わらんな。いつも通りの無愛想」
「まぁ、そうでしょうね」
「だけどアイツが最近早く帰って来るから何かあったんかなぁと思うてココに来たってワケや」
「・・何でココに来ないんでしょうね。ただ触らなければいいってだけなのに」



別に"3日間会うな"とは言っていない。ただ"触るな"と言っただけだ。

火澄はそんなひよのの質問に対して当たり前のように返答した。



「・・まぁ、俺もそんな賭けやっとるときやったら来たくないな」
「何でですかー?」
「あのな、お下げさん。ココって歩とお下げさんぐらいしか人来やんやんな?
 まぁ、俺とかは抜きにして考えてや」
「まぁ・・・来ませんねぇ」
「やろ?で、お下げさんと歩はいつもほとんど2人きりで過ごしとるワケやん?」
「そうですねぇ・・」
「しかもココって鍵かけれるやんな?」
「はい」
「・・・なぁ、そんな場所やのにあの歩が本当にお下げさんを無理やり最後までしたコト無いん?」
「な、無いですよ!!!」



恥ずかしくなったのかひよのの顔はかぁーっと赤くなった。

そんな彼女を見た火澄は歩が彼女のコトがスキな部分がよく判った。



「と、言うワケで歩も手出したくなるねん。そんな場所やから」
「そ、そんなモノですかねぇ?」
「そんなモノやろ。だから歩は3日間ココに来やん」
「はぁ・・・」
「・・でもお下げさんええの?」
「?何がです?」
「そんなコト歩にやらせたら色々処理が大変そうやケドなぁ」



色々と、と火澄はもう一度呟いた。

そんな火澄にひよのは安心しろとでも言うようなカンジで告げた。



「大丈夫ですよ!ちゃんとチューだけって約束しましたし!」
「・・・お下げさん、本当に歩がそんなん守ると思っとるん?メチャクチャ甘いで、それは」
「・・・・・ぇ!?」
「・・・・・・・・」



火澄はひよのの鈍さがよく判った。



「せめてもっと条件付けとかな。回数とか、どっちからとか、・・・どうせ決めてないんやろ?」
「そ、そんなコトまで考えておかなければならなかったんですか!?」
「まぁ、相手がアイツやからな」
「そ、そんな!!じゃあ私・・めちゃくちゃヤバいじゃないですか!!!」
「めちゃくちゃヤバいやろうな・・・」
「で、でもベロチューは無しって約束しましたよ!!」
「・・アイツちゃんと返事したか?」
「・・・・・・してません」
「やろうな。・・・まぁ、お下げさん今回は諦めたれ。3日間触らせんかったんやし」
「うぅ〜っ!!そんなんでしたら賭けなんか無かった方が良かったですよ!」



ひよのがとても悔しそうに言う。


そこで火澄があるコトを思いついた。



「そうや、お下げさん。発想の転換や」
「へ?どうやって転換するんです?」
「たまにはお下げさんから引っ付いたったらええんちゃう?」
「・・でも、あの人そんなコトしたら"邪魔だ"とか言って邪険に扱ってきますよ?」
「それや。邪魔やと思っとるときは歩は手出さへんやろ?」
「あっ!いいですね、ソレ!!」
「まぁ、明日頑張りや」
「はい!!頑張ります!」



ひよのは両手をグーにしてそう言った。


火澄はそんなひよのを微笑ましく見ていた。



















――――――――そして、次の日。

歩はちゃんと部室に来た。



「ぁ、鳴海さんちゃんと来ましたね!」
「・・何か、3日間疲れた」
「?何でです?何かしてたんですか?」
「・・・さぁ?別にこれと言って何もしなかったんだが・・」
「ふ〜ん・・・ぁ、そうです!」




きゅっ




「・・・は?」
「3日間ちゃんと守れましたね〜。もう我慢しなくていいんですよ〜?」



ひよのはそう言いながら歩の胸に飛び込んだ。

火澄と話していた"自分から引っ付く"と言うのをやってみたのである。


ひよのは歩の顔を見ながら彼の反応を待つ。


彼から見ればただの上目遣いに過ぎないのだけど。



「・・・どこでそんなコト覚えてきた」
「は?そんなコトって何のコトですか?」
「・・別に」
「とにかく!早くしないと離れちゃいますよ?いいんですね!?」
「・・・・・・・・」



歩が黙っているのを見て、ひよのは内心喜んでいた。カナリ。

自分がこーゆー風に彼に接すれば手を出されないコトが判ったから。



「じゃあ・・・」
「へ?・・・きゃあ!!」




でも、それは事実では無かった。


歩がひよのにキスをしたから。いつものように、強引に。



「ん・・っ・・・はぁー・・って鳴海さん!!!何してるんですか!」
「何って・・3日間守れたからしてるだけだろ」
「そ、そうですケド!それじゃ意味が無いんですよ!!」
「はぁ?」



フツウにキスをされてはひよのの作戦通りでは無い。

ひよのの作戦ではしないハズだったから。


しかも彼は自分を放しそうに無い。



「と、とにかく!!もうチューしたんですから終わりですよ!放して下さい!!」
「・・別に俺は1回とは言ってないが?」
「・・・はぁ!?(火澄さんが言っていた通りのコト言ってます!!この人!)」
「だから・・」
「ま、待って・・!!んっ・・んん・・」



ひよのが止める間も無く、

歩はひよのが言っていた"ベロチュー"をしてしまった。


そして少し経ったら放した。



「べ、ベロチューはダメって言ったじゃないですかぁ・・・!!!」



力が抜けていて最後の方は声が曇ってしまったひよの。

そんな彼女に彼は言う。



「だってあんた我慢しなくていいって言っただろ」
「い、言いましたケド・・!約束はちゃんと守って下さいよ!!」
「俺はそんな約束した覚えはない」
「覚えが無くてもダメなモノはダメなんです!」
「3日前のコトだしな・・忘れた」
「3日前なんてちょっとだけ前のコトじゃないですか!忘れるワケないでしょ!!」
「・・俺にとっては長かったって言ったら?」
「へ・・?」



少し固まったひよの。

そしてすぐにかぁーっと赤くなった。


その瞬間を歩が逃すワケも無く、



「!?い、イヤですってば!!!・・ふ・・っ」



彼女の抗議の言葉をすぐに閉じられた。

性悪な彼の口付けによって。


つづく。


あとがき。2004.12.17 黒い。長い。ひよのさん可哀想。歩さん最低。 そんな言葉ばかり浮かぶ話。・・誰ですか照久にそんな話書かせたのは!? はい、ゴメンなさい。誰のせいでも無く照久のせいです。 言ってみたかっただけなんです。スイマセン。色んな意味も含めて。 *お手数ですがメニューからお戻り下さい。