感情の渦なんてもうとっくに消えていた。 そんなモノを未だに巡っていたらこの世なんて生きていけるだろうか?今までも。この先も。 彼女は特別強かった。判りきっているコトだけど。 なのに彼は未だに帰ってこない。ココ部室に。 上着もカバンも残したまま出て行ってしまったので帰って来るコトは間違いないと思われるのだが。 そんなの既に元気になった彼女が待てるワケもなく。 「・・さて、迎えに行ってあげましょうかね」 そう言いながら彼女はすっとイスから立ち上がった。気持ちも同時に。 そして彼の上着の着て、自分のカバンと彼のカバンを持ち。 しっかりと扉の鍵も閉めて部屋を出た。 そして向かう。とある場所に。 まるで、約束でもしていたかのように。 カワイイね、アンタ。 校内で最も夕焼けに近い場所、屋上。 ソコには橙色の光が差し込んでいて同時に彼の姿もあった。 フェンスにもたれかかって景色を見ているらしい。 多分、先程のコトを色々と考えているのだろう。 そんな彼に彼女が後ろからゆっくりと静かに近付いた。 「なぁーるみさん♪」 明るい声で呼びかけ、彼女は彼の首元にぎゅっと抱きついた。 その行動に別に無理は無い。 彼は別に驚いた素振りは見せずに彼女を少し見ただけであった。 話しにくいらしい。すぐに目を逸らしてしまった。 そんな彼の心境を悟ってか彼女が彼の隣の位置につき、話しかける。 夕焼け空を眺めながら。明るく。 「何独りで黄昏ちゃってるんですか」 「・・別に」 「それとも他の男にキスマーク付けられちゃったくせに ソレを話してくれないひよのちゃんにムカついちゃってるんですか?」 「・・・ムカついてるのは俺じゃなくてあんたの方じゃないのか?」 「ぇ?」 意外そうに彼を見る彼女。自分に対して怒っていると絶対的にそう思っていた為。 実際には彼は自分のしたコトに対して後悔をしているだけなのであったが。 彼女は「あぁ、そうか」とでも言いたげな気持ちで話を続けた。 カバンは少しの間フェンスにもたれさせておいて。 2人とも目線は空のまま。 「別に怒ってなんかいませんよ。ただ、ちょっとだけほんの少しだけ鳴海さんが怖くなっただけなんです」 「・・・・・・・・・・・・」 「ただの性欲処理になってないかとか。そんな酷いコトまで考えちゃったんです。私。 だから、悪いのはちゃんと話もしないし、そんなコトまで考えちゃった私なんです。ごめんなさい」 誤ったときには目線を彼に向けていた。 彼は自分を許してくれるのだろうか?他の男に痕を付けられた女などもう見向きもしないだろうか? ちゃんと自分の話を聞いてくれるだろうか?思考が廻る。 そして、気付いたら 彼に抱き締められていた。強く。 驚きは隠せない彼女。反動で抵抗しそうになったがそんなモノは既におさまっていた。 彼が口を開く。顔は見えない。 「・・悪かった」 「・・・鳴海さんが今謝った部分って手が早いトコロに対してですか? そんなモノはいつものコトですから今さら謝らなくたっていいですよ?」 クスクスと彼の腕の中で彼女が笑う。ソレは彼に落ち着きを与えた。 彼がいつものように低い声で小さく話した。 「・・あんたがどうしても言いたくないなら別に言わなくたって構わない」 「何がです?ぁ、キスマーク事件のコトですか」 彼女が「えーっとぉ・・」と口元に指を指しながら思い出そうとしている。 どうやら彼女は彼に話すつもりらしい。 別に話すコト自体が嫌だったワケではなく、言って彼に怒られるのが嫌だった為。 「ぇーっと・・ですね、今日お昼休みに少しお昼寝をしていたんですよ。私」 「・・まさか寝てる間に付けられたとか言うんじゃないだろうな」 「当たりです♪よく判りましたねー」 あはは、と言うカンジで話す彼女。 そんな彼女に彼はため息をつく。既に2人は"日常"に戻っていた。 呆れた感情が入り混じったまま、彼が言った。 「誰かは判らないのか?」 「んー・・多分、背丈的に2・3年の人だと思うんですケドねー。 顔が光のせいでよく見えなかったんですよ。私も眠かったコトですし」 「・・何で抵抗しなかったんだよ」 「や、最初は「また鳴海さんかなぁー・・まぁ、眠いですし放っておけばいいですね・・」っと思っていたんですが」 「・・・おい」 「いやー、見事に違う人でした」 彼女はいつもと全く変わらない笑顔で彼の顔を見ていた。 そして彼はこの会話だけでカナリの疑問を多々抱いたがとりあえずこう思った。 彼女は好きでもない男にそんなコトをされて嫌ではないのか? 何故こんなにものん気でいられるのだろうか? と言うかコイツ正真正銘の馬鹿だろ?などなど・・。 「まぁまぁ鳴海さん。そんなにたくさんのコト色々考えると疲れちゃいますよ?」 「誰のせいだと思ってんだよ・・」 「いいじゃないですか。そのかわりにこのひよのちゃんにぎゅーvってしてもらえるんですから!」 ほら、と言いながらいつもはしてこないのに本当に彼の胸にぎゅーvっとひっつく彼女。 嬉しくないワケではないのだが何となく誤魔化されているような気がする彼。 複雑な心境の中、彼はそれでも彼女の頬に手をのばそうとした、が そのままスムーズにはなかなか進ませてくれないモノで。 「はい、じゃあ帰りましょうっ」 そう言いながら彼女は既にぱっと彼を放していた。 そして彼の上着を着たまま、気分が良さそうに鼻歌交じりで屋上の出口へと向かっている。 カバンを置いていっているトコロを見ると彼に持たせようとしているコトがよく判る。 何も考えていない風に見えて何気に計算高い彼女。 と、まぁそんなイメージを彼女に抱いてしまっていた彼がぽつりと。 「・・可愛くねぇ女」 「えー??何か言いましたか〜?」 彼女は先程彼が言った言葉がよく聞き取れなかったらしく叫び気味で訊ねていた。 少し離れた距離を置いている2人。 まるでさっきまでの2人の心の距離を表しているかのようで嫌だ。彼にとってはそう思えた。 すぐ後ろにあるカバン2つを持って、彼はゆっくりと穏やかに出口へと進む。 勿論、その間には彼女がいて。だから、通り際に言ってやった。 聞こえるかどうかの瀬戸際な声で。 「 」 「え?」 そう言い捨てて彼はペースを変えずにそのまますっと彼女の横を通り過ぎてしまった。 そして残された彼女の反応は勿論 「ぇ。え、ぇえぇえぇ!?!?!?」 であった。 まぁ、普段の彼を見ていればその反応は正しいと言える。 そしてその反応こそ彼が求めていたモノ。いつも求めているモノ。 彼女はすぐに走り初め、階段を下りる途中の彼に質問攻め。 彼の歩くペースに合わせて彼女も一緒に階段を下りる。 「な、鳴海さん今何て言ったんですか!?」 「さぁな」 「と言うか頭大丈夫ですか!?」 「や、あんたには言われたくない言葉だな。ソレ」 「だってシラフで鳴海さんがそんなコト言うなんて・・どう考えてもおかしいじゃないですか!」 「言ったコト判ってるなら聞くな」 「で、でもでもっ!!」 「ぁー、煩い」 自分がその反応を求めたくせに否定する態度を取る彼。 性格なのだから仕方がない。そんな彼が言った言葉は・・ 「だって鳴海さんさっき"可愛いな、あんた"って言ったじゃないですかっ!そりゃ驚きますよ!」 「・・言ったか?」 「言・い・ま・し・た!!」 「んなコトどうでもいいからそろそろ上着返せ」 「言ったコトを認めない&どうでもいいなんて言う人なんかに返しません!!」 そう怒りながら彼より前に進んでしまう彼女。 そんな彼女の後ろ姿を見つつ、面倒と思いつつ、ため息を付いた彼。 とりあえず行動を起こす。 「待てよ」 呼び止め、ぐいっと彼女の片腕をつかむ。 彼女が彼と向き合うカタチに自然となり、いつも以上に身長差が生まれる。 「何ですか」 「・・別に性欲処理とかそんなつもりないからな」 「は」 そう言ったとたん、その差を彼がかがむコトで縮め、 キスを捧げた。 「ん・・っ・・・」 結局両腕をつかまれてしまった彼女は抵抗するコトが出来なく、 彼が放すまでただ声をもらして立っているしかなかった。 そして解放されたあと息を吸い、彼をきっと睨みつける。 「突然何するんですか!」 「上着返せよ」 「質問に答えて下さい!!」 「キス。・・もう答えたんだから返せよ」 「嫌です!」 「返せ」 「いーやーでーすー!」 仲直り(?)をした後だと言うのにもう既に彼女を怒らしてしまっている彼。 結局、すぐにまた仲直りして一緒に帰ったコトなど 日常茶飯事なのである。2人にとって。 その繰り返しが、きっと2人の幸せにつながるモノ。 つづく。
あとがき。2005.03.09 前回はシリアス風味で終わらしたくせに今回はこんなのに。 2ヶ月くらい前に書いたヤツだしなぁ。不満いっぱい。( ̄д ̄)でも直さない。 何となくそのまま残しておいた方がいいかなと。 *お手数ですがメニューからお戻り下さい。