予想範疇



「はいっ」
「・・は?」



手元に出されたモノ、またはその人物に対してマヌケな声を出してしまった彼。
コレを見て彼女は理解した。彼が今日が何の日かを忘れているコトを。
まぁ、予想は出来ていたコトなのだけども。覚えていたから何と言われても仕方がないのだけども。

判ってくれないかなー、今日まで自分がどれだけ苦悩していたのかくらい。



「ほら、今日はバレンタインディですよ。鳴海さん」
「・・別に言われなくても知ってる」
「じゃあ予想出来た出来事じゃないですか?」



自分がいつものようにこの部室で、いつものように放課後でこうするコトくらい軽く。
そんなマヌケな声で反応されてしまったから、一瞬日付を間違えてしまったかと思った。



「や、あんたがそんなモノ作れるワケないって思ってたから」
「失礼な発言よりもまずは感謝の気持ちを述べるコトくらい出来ないんですかあなたは?」
「日常の一コマに値するからこうなるんじゃないのか」
「生憎そんな一コマは私にはいらないんです」
「あぁそう」
「と言うか早く貰って下さいよ。こうやって前に出して私だけずっと立っていたら馬鹿みたいじゃないですか」
「事実を表していて丁度いいだろ」



彼はこんなコトくらいしか彼女に言えない。告げれない。
何かの呪いにでもかかってしまっているかのように。
もし、本当にそうだとしたら早く誰か解いてやって欲しい。
アレルヤでも大魔王でも何でも構わないから、ねぇ?



「・・何か貰うのを渋ってません?」
「何か思い当たる節でも?」



んー・・・と腕を組んでしばらく考える彼女。
すると結論が一つ出た。



「・・味?」
「・・まぁ、全く違うワケでもないが」
「酷過ぎじゃないですか?」
「じゃあ嘘ってコトにしとく」
「何なんですかソレ・・」



思わずため息が出る彼女。
ため息を付くと幸せが逃げると聞いていたのであまり普段は付かないようにしていたのだが。
無理も無い状況ではないのだろうか?この場合。



「・・じゃあもういいですよ。どーせあんまり美味しくないと思いますし」



一応、頑張ったつもり。自分的に。
でもやっぱり当たり前なのだけどお店とかで売ってるヤツの方が断然美味しくて。
"気持ちがこもってる"とかそんな可愛らしいコトが言える彼でもないし。
諦めはちゃんと付いてる。彼に対しては確実に。
だから離れ、距離がソコに出来た。

それなのに彼は腕を伸ばした。



「!!」



予想していなかった出来事に彼女は驚きの表情を隠すコトは出来なかった。
彼が彼女の腹部に腕を通し、自身に引き寄せたその出来事に対して。
そうなると自然と座っている彼の上に乗るコトになる彼女。
少し首をひねって上を見れば彼の顔があるのは当然。



「何するんですか。いきなり・・」
「知るかよ」
「自分のしてるコトもよく判らない人が私に触らないで下さい」



ほら、と彼女が彼の腕を解こうとする。
だけど、そんなの外れるワケもなく。
彼に贈るつもりだったソレを片手に彼女はため息を付いてただ座っているコトしか出来なかった。



「・・何がしたいんですか」
「したいワケでもないのにしなくてはいけないときがある」
「ではあなたは今何をしなくてはいけないんですか?」



そう訊ねた彼女。顔は見てない。
ただ前を向いたままで後ろにいる彼に訊いている状態。
すると彼が彼女の耳元で囁いた。



「     」
「・・は」



告げられた彼女は先ほどの彼のようにマヌケな声をもらしてしまった。
ソレはあまりにも彼には似合わなさすぎて。
とりあえず反論を述べてみたり。



「・・でも、どーせあなただって貰ったりしているんでしょう?」
「生憎断らせてもらった」
「甘いの嫌いでしたっけ」
「別の理由だからこの状況になっているんじゃないのか?」
「・・・・・・・・・」



何ですか、負けを認めろとでも?謝れと?
仕方ないじゃないか、あなたがそんな感情を持てる人だなんて知らなかったのだから。

・・まぁ、喜ぶべきコトなのかもしれないケド。



「全く思い当たらなかった節でしたよ」
「思い当たっていたら何かしてくれたのか?」
「んー・・そうですねー・・可哀想ですからちゃんとそれなりの対処はしたんじゃないでしょうか」
「あんたでもそんな感情を持てたんだな」
「そっちこそよくあんな感情を持てましたね」



そう軽く笑いながら彼女が後ろを少し見上げ彼の顔を見る。
どことなく嬉しそうで。



「貰ってくれますよね、コレ」



贈りモノを彼の前に出す。
「ちゃんとこれからは気をつけますから」
と、言葉も添えて。
彼の腕はまだそのままで。ただ違うのは彼女の感情と表情。
もう拒否の言葉も態度も見当たらない。



「開けてくれないか」
「いいですよ?」



彼女がゆっくりと包装を解く。
中のモノの見た目はこれといって問題はない様子。
そこで彼が耳元で囁いた。



「      」



一瞬だけ思考が停止した彼女。
しかしすぐ起動。慣れから来るモノだろう、多分。
そう、この人はそーゆー人だった。忘れちゃいけないだろう自分、みたいな。



「・・鬼」
「予想の範疇だろ」
「そうかもしれませんけどねぇ・・」
「可哀想じゃなかったのか?」
「こんなコトしか言えない部分は可哀想だと思いますよ?とても」



正直、自分からこーゆーコトをするのは慣れていない彼女。
でも今日は一応、特別な日なワケだし。
彼も珍しく、あんな感情を持ってくれたワケなのだから。

願い事をきいてあげよう。仕方ないから。可哀想だし?



「そのかわり、1ヵ月後頼みますよ?」
「まぁ、あんたよりはマシなモノが作れるコトは確実だな」
「こんな人の言うコトをきいてあげなくちゃいけないひよのちゃんは何て可哀想なのでしょう」
「あんたより可哀想なヤツなんて腐るほどいると思うぞ」
「あなたにも言える言葉じゃないですか」



終わりが見えない会話を交わしていたら彼が彼女の体ごと自分の方向へ向けた。
先をせがむだけでなく、きっと彼女の表情をまともに見る為でもあると思う。
彼女は特に驚いた表情も見せずに目の前の彼に訊ねる。



「本当に味自信ないですよ?」
「火澄や浅月の反応は?」
「・・何気に皮肉入ってませんか」
「そうか?自覚はないんだが」
「先ほどの感情も?」



彼女は彼の瞳を一直線に見る。
彼は彼女の瞳を一直線に見る。
他のモノなど今は興味ない。むしろ何もない白であったら良かったのに。



「あったからこうなるんだろ?」
「そうですか」
「嬉しそうだな」
「いえいえあなたにこんなコトをしなくてはいけないと言うのに、ドコが嬉しいそうに見えると言うんですか」
「本心からか?」



彼は判っていて訊いた。無意味な行為。
性格がこうなのだから仕方がない。

そんな彼に彼女は小さく言葉をもらした。



「・・別に?」



そして贈りモノの中身の1つを取り出し、口に軽く銜える。
彼の目を見えないようにそっと片手で塞ぎながら、そっとあずけた。

すぐに彼女が放したのも、それを彼が許さなかったのも



お互いの予想の範疇。




『予想の範疇』おわり。


あとがき。2005.02.11 10000HITキリリク。水瀬 ひゆさんからのリクなのです。オーダーは『鳴海の嫉妬で微エロ』 や、何か意味不な部分多いね!ヽ(^。^)丿ゴメン、照久だもん☆(理由になっていない謝罪) 書いてる途中で「微エロじゃねぇじゃん!!コレ!(; ̄Д ̄)」と馬鹿なりに気づきましてね。 最後の方だけちょこっとひよのさんがLet's tryってカンジで。・・ダメですか?ひゆさん。 何とか14日までに間に合ったって気持ちしかないんですが・・。(T_T) とにかく!キリリクありがとうございました〜。(V^−°) *お手数ですがメニューからお戻り下さい。