人形遊びの時代は過ぎた どこまでが通常でどこからが異常なのだろう。 だいたい僕らは自分達のコトを知らなさすぎる。 また、知る術も判らないというからどうしようもない。やるせない。 「ぁ、歩お帰り〜」 いつも面倒ばかり押し付けてくる同居人の声。 その証拠に機嫌&調子が良さそうな雰囲気が声だけなのに漂っている。 周りから見れば"愛想が良い"という評価を貰えるのかもしれない。 しかし、彼にとっては神経を逆撫でられるだけで終了。 "不愉快。ムカつく。つーか何処か行け?" そんな評価しか貰えない。 「・・ただいま」 一応挨拶は返す。今のトコロその同居人は何もしていない。 挨拶ぐらいはするだろう。玄関なので声しかしないが。 方向的に同居人はリビング。何も考えずにそちらへ向かう。 嫌でも通らなければならない場所であるし。 でも、扉を開けた瞬間呆れた。 「はい、歩どぉーぞ」 何かのキャンペーンガールのように笑顔でとあるモノを彼に渡す同居人。 缶に入ったアルコール類。一般的なあの炭酸飲料。 しかし口に含んだら違法行為なアレ。 彼も含んだコトがないワケではないが。嫌いなワケでもないが。 義理の姉に怒られるコトは確実だろう。ソレが面倒。 残りの数かゴミなどですぐバレる。 やはり彼にとってこの同居人はトラベルメーカーらしい。 「・・いらない。つーかお前も飲むな」 「ええやーん。そんなカタいコト言わんくても〜」 「カタいとか柔らかいとかそーゆー話じゃなくてだな、面倒なんだよ。後が」 そう言いながら彼に渡されたモノを冷蔵庫に戻す。 同居人は既に一缶を少し含み始めたトコロだったらしく。 ソレの回収は諦めた。一缶だったら責任は同居人1人だけが取れば何とかなりそうなので。 「・・何や歩、ノリ悪いなぁ」 リビングのテレビのスイッチを付けながら口に含む同居人。 慣れたカンジでむせたりなどしない。その辺がまた生意気。 「気分じゃないんだ」 そう言いながら自室から私服を持ってきて着替える彼。 そんな彼に同居人は横から肩に腕を回す。 ウザい、としか思えない彼。別に何も不自然な感情ではないと思う。 「何言うとんのや。お前だって色々やっとるくせにぃ・・」 「・・別にソレ自体が悪いんじゃなくて片付けが面倒なんだよ」 「ただゴミ箱にポイっとすればいいだけやん」 「あぁ、それだけだったら俺は何も言わないさ。それだけだったらな」 そう言いながら同居人の腕を払う。 「歩が冷たい〜」と何やらブーブー言っているが気にしない。 そんなとき、チャイムが鳴った。 ピーン・・・ポーン・・ 既に夕方だったので早めに義理の姉が帰ってきたのかと思った。 しかし鍵を持って行っているハズなのでチャイムをわざわざ鳴らす必要が無い。 と、なると客人。最近は怪しいセールスも多いのでドアを開ける前に 「どちら様ですか?」 と彼は確認。するとドア越しから聴き慣れた声が。 「結崎です」 一瞬誰かと思った。正直。 そういえばそんな苗字だった、とか失礼なコトを考えながらドアを開ける。 下の名前もすっかり忘れているなんてコトは彼女には極秘。 「ぁ、お下げさんやん」 彼の後ろにはいつの間にか同居人が。 微妙に酒臭いのは気のせいか? 「こんばんは」 ちなみに彼女とは何時間か前に別れたばかり。彼にとっては。 ただ違うのは服装のみ。なのに何故こんなにも先ほどとは受ける印象が違うのだろう。 別に化粧をしてるワケでもないのに。ただデニムのスカートに黒のコートを羽織っているだけだというのに。 「・・何か用か?」 相変わらず愛想無しの彼。別に不機嫌なワケではない。 性格だから、としか言えない。彼女も特に気にした様子は無い。 「ほら、コレ鳴海さん忘れていったでしょう?」 そう言いながら手提げのカバンから数枚のプリントを彼に差し出す。 どうやら部室に置き忘れて行った課題らしい。 「わざわざ届けてくれたん!?お下げさん優しいなぁ〜。コレあげるわ〜」 「ぇ、あの・・これって・・」 何時の間にか同居人は彼の後ろから彼女に先ほどのアルコール類の缶を渡していた。 さっきまでは確かに一缶だったハズなのに何故か口が開いてない缶をもう一缶持っていたらしく。 「ぁ、おいっ」 「お下げさん上がって上がって」 彼は止めようとした、が。 同居人が彼女の腕を引っ張り家の中に強制的に入れた。 彼女も缶を片手に何とか靴を脱ぐくらいしか出来なかった。 彼は頭を抱えながらドアの鍵を閉めた。 リビングに2人の姿はなかった。電灯の明かりのみ。 が、放っておくと後々さらに面倒になるコト間違いなしなので何とか見つけなければならない。 そんなコトを彼が思っていたとき、明るい2つの声が彼の部屋から聞こえてきた。 彼の頭痛は酷くなるばかり。そんな中でも何とか扉を開けた。 「ぁー・・鳴海、さん・・?」 彼が行ったときにはもう遅かった。既に顔が少し赤い。 予想通りは予想通りなのだがちっとも嬉しくない。 彼女は両手で1つの缶を握り締めていた。弱々しく。ベットの横にもたれながら。 「ほらっ、歩も」 あまり酔っていない様子でこの状況の元凶である同居人が机の上にある飲み物をすすめる。 いつの間にか菓子まで置いてある。用意周到。 彼は静かにゆっくりと机の前へ座った。左斜め前には同居人。 「・・なぁ、火澄」 「何や?」 「お前、一回死んでみるか?」 「・・んー、それは無理やなぁ〜俺一回しか死ねやんもん♪」 「だからこそ意味があるんだ」 そう言いながらため息。そして、質問を投げかける。 「どれだけ飲ませた」 「や、まだお下げさんが持っとるアレだけ」 「・・じゃあ何で飲ませた」 「ぇー・・だってぇ・・・」 ちらっと机を挟んで前にいる彼女を見る同居人。 その彼女は「んー・・」と少し声を漏らしながらまだもたれたまま。缶は離さずに。 そして再び彼へと視線を戻した原因の人。 「・・面白そうやん?」 「ぁー・・やっぱ死ねよお前。是非死ぬべきだよ。お前は」 「でも歩も楽しめると思うで?今のお下げさん」 「何が」 「歩の好きなように出来るやん」 そう言った途端、すぐ右斜めにいた彼女が彼の首元へ両腕を回した。 突然の出来事ではあったが全く驚いた様子を見せない彼。酷く冷静。 彼女が持っていた缶は空であった為、こぼさずに済んだ。 でも一応、顔が近くにはあったり。潤み目も。 「・・ねぇ、鳴海さん」 「何だよ」 返す言葉もいつもと変わらない。状況は少し違うが。 「鳴海さんって・・」 「俺がどうかしたのか」 「・・・やっぱ、何でもない、です・・」 「あぁそう」 「・・やっぱり、お聞きしてよろしいでしょうか・・」 「・・好きにすれば?」 変な会話であるコトに変わりは無いのだが、それでも一応ちゃんと返してあげる彼。 ため息がオマケなのは当然。そんな彼を悪魔は楽しそうに横から見ている。 そして彼女は回していた腕を解き、彼の肩に頭を軽くもたれかけた。 言葉をゆっくりと、1つずつ、綴った。 「・・私、スキな、人がいるんです・・・」 「は?」 一見、別れ話のようにも思える言葉。さすがに彼もよく意味が判らなかったらしく。 でも、すぐに心配なんかいらなくなった。 「その人、苗字に"な"が付いて名前に"あ"が付く人なんです、ケド・・」 どうやら彼女は本人に"その人"についての相談をしてしまっているらしい。 わざとなのか、酔いのせいからなのかは判らないが。 とりあえず話は聞いてあげる。変な感覚であるコトには変わりないが。 「・・そいつがどうしたんだよ」 「・・私の、ただの・・片思いかもしれないん、です・・」 んなワケないだろう、と彼は言えるような立派な人間でもはない。 今の状況を続けるのみ。ただそれだけ。 「何故そう思うんだ?」 「・・だって、何も言ってくれない、から・・・」 少しは頭が凍ったような感覚にもなった。少しは。 まさかこんなコトで彼女の日々感じている不安感を知るとは思わなかったので。 あまり表に出すコトのない、ソレを。 「・・今言っても意味無いしな」 「ぇ?」 「何でもない。んなくだらないコト考えてないでもう寝ろよ。眠いんだろ?」 彼女の瞳は確かにとろんとしていた。酔いのせいで。 そして彼は彼女に有無も言わせずに自分のベットへと持ち上げた。 近くでは同居人が「おぉ〜やるやん」とか何やら言っているが無視。 彼は既に半分寝かけている状態の彼女に一言。 「オヤスミ」 そう言ってバサッと上布団を被せてあげた。もう彼女は眠りについた。 一仕事終え、その場に座ってコップにお茶を注ぐ彼に同居人が話しかけた。 どうでもいいコトを言うだろうな、と思いつつも聞いてあげる彼。 「・・ええの?」 「何が」 注ぎ終えたお茶を口に含む。同居人はアルコールを口に含む。 「そんな本能に背いて」 「・・これぐらいで従ってたら脆すぎだろ」 「お前脆いやん」 「誤解」 「え〜?事実やろー」 馬鹿じゃないのか、と思いつつ。 彼はこう言った。 「・・人形遊びしても仕方ないだろ」 「は?」 同居人としては謎な言葉を残して彼は机の上のモノを少し片付け、 キッチンへと運んで行ってしまった。 アルコールの缶を片手に、そしてもう片方の手の指を口元へと持って行き、考える同居人。 そして、理解した。 「ぁー・・なるほど」 そしてベットで寝息を立てている彼女に近づく。顔を覗く。 「お人形さんやって。良かったやん、お下げさん」 ニッコリと微笑んだ。いつものあの無敵な笑顔で。 そんなコトは彼女も彼も知る由がないのだげど。 とりあえず、眠りについている彼女はそれっぽかったらしい。お人形さん。 『人形遊びの時代は過ぎた』おわり。
あとがき。2005.03.03 13500HITキリリク。四葉サマからです。(^▽^笑) オーダーは「お酒ネタ」。・・どぉでしたでしょーか、四葉サマ。遅くなりましたがゴメンなさいっ。 こんなのしか書けませんでした!((( T_T)やたら長くなってしまいましたし・・嗚呼。 でもあんまひよのさんが鳴海にベタベタする話は書きたくなかったのです。と言うか書けませんっ! この役立たず照久っ!( - -)/☆(*_*)とにかく・・もらってやって下さい。リクありがとうゴザイマシタ〜。 *お手数ですがメニューからお戻り下さい。