相手のスキな部分なんて簡単に言えない、そう思う。

スキなコトは自分でも痛いほど判っているのだが言えない。

だからたまに本当に相手のコトがスキなのか疑ってしまう。


そんなコトを思いながらひよのは放課後の教室でうとうとしていた。

授業はとっくに終わっていたが、部室にすぐには向かわなかった。


眠かった。ただそれだけ。面倒なだけ。

歩のコトが少しだけ気になったが結局、睡魔に負けた。



「・・ちょっとだけ・・・寝かせて下さい・・ね」



彼女は眠りについた。

誰もいない、静かな教室でただ1人。





























とまどいながら





























気付いたときにはどれだけ時間が経ったのか判らないほど、辺りは暗かった。

多分、下校時間も過ぎてしまっていたと思われる。


なのに居た。彼が。



「鳴海さん・・・?」



目をこすりながらも寝起きなのであまり意識がはっきりしていない。

だからひどくは驚かなかった。

でも何故居るのかは疑問に思った。



「熟睡してたな・・」
「・・いつから居たんですか?」



どうやら歩は今までひよのの隣の席に座って、彼女を眺めていたらしい。

頬づえを付きながらこちらを向いていたから。



「・・・で、何してるんですか」



気付いたら歩が後ろから自分を抱きしめていた。

いつの間にイスから立ち上がって自分の後ろにいたのだろう。

寝ぼけていたから気付かなかっただけなのだろうか。

とにかく、この状況はイヤでは無いのだが・・このまま許すワケにもいかない。



「もう外も暗くなってるんですし、帰りますよ鳴海さん!」
「・・俺はずっとココであんたが起きるのを待っていたのに?」
「うっ・・・」



ソレを言われると痛い。

確かに歩は自分が起きるまでココに居てくれた。それは事実。

とにかくひよのは何でもいいので言い訳を考えてみた。



「で、でも!今日じゃなくてもいいじゃないですかっ!」
「イヤだ」
「い、イヤだって・・」



彼は子供みたいに駄々をこねた。

珍しい反応なのでひよのも戸惑う。

どう対応したらいいのか判らない。

そんな風に黙っていたら、またいつの間にか髪がほどかれていた。



「・・何するつもりなんですか」
「・・さぁ?」



そう言いながらさらさらと髪の毛を撫でてくる。


・・・止めなければ非常にヤバい事態に陥る、このままでは。

しかしその方法が見つからなければどうしようもない。

なるようにしかならない。

だから自分もなるようになってみた。言ってみた。



「・・ねぇ、鳴海さん」
「何だ?」



髪の毛を撫でるのはやめないが、話は聞いてくれる様子。

以外と落ち着いている自分に心の中で少し苦笑。

話を続ける。



「鳴海さんは・・自分のスキなモノに対してどんな部分がスキなのか言えますか?」
「・・例えば?」
「キレイだからとか、形がスキだからとか・・」
「そういう意味じゃなくてだな」
「え?」



歩はため息を付いていた。

息が自分の頭に当たっていたので顔を見なくても判る。


でも、何故付いたのかは判らない。



「何を対象に言えばいいんだってコトだ」
「対象?」
「だからその"スキなモノ"の例えばは何だって訊いてるんだよ」



歩の言っている意味が判った。

そしてその意図も判ったので言いにくかったが・・


言うしかないような気になった。



「例えば・・私、とか・・・」
「最初からそう言えばいいだろ?」
「だ、だって!何か恥ずかしいじゃないですか!」



ようするに"自分のドコがスキなのか"ってコトを訊いてるワケで。

ソレはやっぱりカナリ恥ずかしいモノがあると思う。

でも、気になってしまう自分がソコにいた。


彼は髪を撫でるのをやめない。



「全く・・くだらないと言うか何と言うか・・」
「くだらなくなんて無いですよ!大事・・・んっ・・」



耳にかすかに触れた。歩の息がかかったので判る。

そして自分の耳が熱くなっているのも判る。


歩が囁く。



「くだらないだろ・・?」
「く、くだらなくなんか・・ない・・・!」
「そうか?」
「きゃあっ!!!!」



いつの間にか歩の手が自分の足に行っていて。

必死に両手でスカートを押さえるひよの。

さすがにコレ以上は本気で止める。と言うか止めないと色々とヤバい。

ひよのは歩の方に顔を向けて叫んだ。



「調子に乗らないで下さい!軽蔑しますよ!」
「目潤ませながら言うセリフじゃないな」
「う、潤んでませんよ!」
「潤んでる」
「潤んでませんってば!!」
「無理するなって」
「無理してません!!!」



思い切り叫んでやった。

そしたら歩はふっと自分から離れた。止めてくれたのだろうか・・?

そう思いながらちらっと後ろを見ると


彼に口付けされていた。力強く。



「ふっ・・・ん・・・」



声がイヤでも出てしまう。潤むほどの涙も。

抵抗しようとしても、両手が歩の体に押さえつけられている為出来ない。

目をつぶって歩の腕の中にいるぐらいしか出来なかった。


そして、やっと解放。唇だけ。



「もう・・イヤ・・・っ!」



泣きながら、抵抗しながら歩の腕の中にいる自分。

彼が嫌いなワケでは無い。むしろスキで仕方が無い。


でも、イヤだった。何かが。



「何でっ!いつも無理やりなんですか!!」



歩の顔を見ずに下を向いて叫ぶ。



「私の話もちゃんと聞いて下さいよ!!!
 このままだったら私・・鳴海さんのコト嫌いになっちゃうじゃないですか!!!」



何がイヤなのか判らない。

無理やりなのがイヤなのか。それもきっとある。

でも、ソレは決定的なモノではない。だからきっとソレは少し違う。


ただ、自分の話を聞いて欲しかった。それだけ。



「・・じゃあ言ってみろよ」



今度は歩が下を向いて呟いた。

ひよのが少し顔を上げた。歩が自分の話を聞いてくれるのかもしれないと思ったから。



「何をです・・・?」
「あんたは俺のドコがスキなんだよ。言ってみろよ」
「・・・ぇ」
「嫌いになるってコトは今はどうなんだよ」



歩は怒っているのだろうか、自分に。

いまいち感情がつかめないのでどう対応したらいいのか判らない。

また、戸惑う。でも何かは言ってあげたい。



「鳴海さんの・・・スキな、トコロ・・?」
「人に訊くんだったら答えてみろよ」
「・・・・・・・・」



黙ってしまう。スキなコトはイヤと言うほど判るのに。

何も言ってあげれない。腹立たしい。


でも、もう疑ってはいない。答えが自分の中で出た。



「・・鳴海さん、顔を上げて下さい」



そっと両手で顔を上げさせる。

歩の瞳の眼差しが強く感じる。多分、自分もそうなのかもしれない。



「私は、鳴海さんがスキなんです。それでいいと思います」



そう答えたひよの。飾り気も何も無い、本心。

黙っている歩に話を続ける。



「でも、鳴海さんの行動によっては嫌いになってしまうかもしれません。
 それがイヤなんです。私は。だからその・・・あの・・」



少しの沈黙。

そんなひよのに少し不思議そうな顔をした歩。

何故か彼女はもじもじしていて。

そして発した、ひよの。



「・・えっちぃコトはあんまり、しないで欲しいんですが‥・」



また沈黙。お互いに。

校舎には人がいる気配がしないので余計に。


勿論、その後は苦笑の歩。



「・・ズルくないか、人に訊いといてその答えは」
「そ、それは・・」
「でも、俺もそれでいいと思う」
「・・え?」
「本心だよな、ソレ」
「は、はい!」



ひよの自身も自分の答えに納得。

結局、別に何も考えなくて良かったワケで。

ただお互いに"スキ"だってコトだけで。


しかし、まだ1つ微妙に問題が残っていた。



「じゃあ続きするか」
「え?・・・って、えぇええぇえぇ!?!?何でそーゆーコトになるんですかっ!!」
「問題無いだろ?」
「有りまくりですよ!!えっちぃコトしないでって言ったじゃないですか!!さっき!」
「"あんまり"って言っただろ?」
「と、とにかく今日はもう帰りましょう!!ね!?」



自分の腕の中にいるひよのは必死で顔を見上げて訴えている。

今、少し判ったかもしれない。

自分が彼女をスキなトコロはこーゆー態度を取っているときであるコトが。



「・・俺、あんたが起きるまでわざわざ待ってやったんだけど」
「ぅー・・・・」
「しかも部室来ないあんたを探しにココまで来てやったワケだし」
「ぁー・・・」



ひよのが困っているトコロもスキであるコトがよく判る。実感している。

でも彼女には言ってやらない。怒るに決まっているから。


そのかわりため息を付きながら、涙の跡を拭いてあげた。

優しく。同時に戸惑う彼女の顔に苦笑。



「・・目、閉じてろ」
「え・・?」
「いいから」
「・・・・・・・・・」



静かに閉じた。


そしてまた静かに、口付けをしてあげた。

涙の跡を拭いてあげたときのように優しく。


彼女も驚きはしていたが、抵抗はしていなかった。

スキだと新たに実感していたから。


そして、離した。



「・・帰るぞ」
「・・・いつもこんなんでしたらいいんですケドね〜」
「いつもと別に変わらないだろ?」
「全っ然違いますよ!!自覚無いんですか!?」
「無い」
「・・私、あなたと居ると疲れます」
「俺もだ」
「あなたはむしろもっと疲れて何もしないで下さい!!」




戸惑いながらも、2人は更に距離を縮めた。

これからも多分、ずっとそんなコトを繰り返して前に進んでいくのだろう。



『とまどいながら』終了。


あとがき。2004.12.27 6000hitで嵩さんからのキリリク。オーダーは「微エロ」。 ・・あんまり微エロじゃないですよね。うん。期待してたのと全然違ってたと思います・・。 ・・・凹みます。何かキリリクだと変に力入れすぎなのかもしれません。 リクしていたのと違うかもしれませんが、嵩さんに贈ります。キリリクありがとうございました。 *お手数ですがメニューからお戻り下さい。