ひよのにとって歩はとても厄介な人物であって。 最近はとくにそう思える。もとから無愛想な性格なので厄介と言えば厄介だったのだが 今とは少し(や、カナリ)状況が違う。 「鳴海さんって本当に困った人ですよね・・」 その人物は困っていた彼女のひざの上にフツウに眠っていた。 気持ち良さそうに。 ようはひざまくら状態なワケで。 別に彼が注文したワケでは無いが屋上の床に彼がそのまま寝てしまったので 彼女がその状態にした。だから別に怒ってはいなかった。イヤでもない。 そんな、昼休みの屋上はとても静かだった。穏やかだった。 困った人だね。 自分のひざの上に寝ている人物。 鳴海歩。 一体自分は今までどれだけこの人物に振り回されたのか判らない。 でも、自分が彼のコトがスキなのは判っている。 何とも複雑なキモチ。感情。 「はぁー・・・・」 ひよのがため息を付いた。 同時に彼の穏やかな寝顔を眺めながら色んなコトを考える。 "手出さないのは寝てるときだけなのか!" とか。 "ずっとこのままで目を覚まさないでいてくれないかな・・その方が平和" とか。 "前髪伸びてるから今度切ってあげよう" とか。 "何かイタズラしちゃおうかな・・" とか。 そして、 "・・やっぱり、スキなんだなぁ・・・" とか思ったり。 また、そんな自分を愚かだと思う。 「・・・もしかして本当は起きてるんじゃないですか」 何となく、そう言いたくなった。 馬鹿な自分をまぎらわすためだったかもしれない。 そして彼女は彼の頬にそっと右手を添えた。 明らかに自分の体温とは違うコトが判る。 そこに彼がいるコトも実感できる。 またしても彼女はそんな自分に苦笑したくなった。 でも出来なかった。 彼が目を開けていたから。 視線は自分に対してだった。無表情で。 とりあえず、会話を交わしてみた。 「やっぱり起きてたんですね」 「・・今、起きた」 「本当ですか〜?別にうるさくしたつもりは無いんですケド?」 いつものように元気良く答える。 笑っていたが苦笑ではない。心からの微笑み。 「・・手」 「は?」 「・・・あんたが手を添えたからかも、しれない」 「あぁー、そうですか。かもしれませんね」 ひよのが手を離そうとしたときに歩は言った。 「しばらく離すなよ」 「・・何でです?」 「・・・何となく」 「変な人」 「あんたに言われたくないな」 「失礼ですねー、私のドコが変だと言うんです?」 「全部」 「キス魔」 「・・何でソコでその言葉が出てくるんだよ」 「あなたの言う通り変な人だからじゃないですか?」 「・・・・・・・・」 くすくすと笑うひよの。 そこで2人は沈黙。 静かで、風だけが吹いている。 ただ2人が何を考えるワケでもなく、見つめ合っていた。 どれだけ時間が経ったかは判らなかったが ひよのが口を開いた。 「・・あのー、」 「・・・何だ」 「いつまで私のひざを枕代わりにしておくつもりなんですかぁー?」 「・・さぁ?」 「髪の毛くすぐったいんですケド」 「知るか」 「結構重たいんですよ?」 「かもな」 「むぅー・・」 「乗せたのはあんただろ?だからあんたがどければ済むんじゃないか?」 最もと言えば最もな意見。 しかしひよのはその言葉に対しては何も反応せずにこう訊いた。 「・・手、離していいですか?」 「・・別にいいんじゃないか」 「曖昧ですね」 「曖昧だな」 ひよのが手を離した。 その手は歩の髪に行った。そして触れた。いじくった。 「髪の毛伸びましたねー、結んでもいいくらいなんじゃないですか?」 「・・馬鹿言うな」 「結んだら少しは可愛くなるかもしれませんよ〜?」 「それはあんたの役目だろ」 「もっと可愛くなれと言うんですか?ひよのちゃんはもう間に合ってますから」 「全然」 「殴られたいんですか」 「・・可愛い」 「ですよね〜♪」 ニコニコとしながら歩の髪をいじりつづけるひよの。 しばらく歩も彼女をそのまま放っておいた。 見ていた。"見とれていた"の方が合っていた。 だから彼は彼女のひたいに口付けをしてしまったのかもしれない。 わざわざ寝起きで重たい体を起き上がらせてまで。 その行為は一瞬だったため、誰も止めるコトが出来なかった。 だが、時は止まったように感じた。2人には。 「・・またチューしましたね」 「したな」 「何でするんですか」 「結崎先輩可愛いですから」 「答えになってませんよ!!しかもこんなときにだけ後輩面しないで下さい!」 「別に、口じゃなかったんだから怒るなよ。」 「・・おデコにする人はえっちぃんですよ。知ってました?」 「それは口の方が良かったってコトか?」 「もうっ!!馬鹿なコト言ってないで早く教室戻りますよ!! お昼休みはそろそろ終わってしまうハズですから!」 「・・顔赤い」 「煩いですよ!!!黙って下さい!!」 誰もいなくなった後でも、そこは穏やかな風が吹いていた。 また誰かが来るのを待ち望んでいるのかのように。 つづく。
あとがき。2004.12.29 ちょっとだけお話っぽくて嬉しい、かも。字が詰め詰めだけどねー。読みにくい。 たまにはおデコにチューだけでもいいかなと。 つーか初めはそれからだと思う。順番違ってるよ、キミら。 *お手数ですがメニューからお戻り下さい。