「鳴海さーんv」 ぎゅぅーっと後ろから歩の首に腕を回すひよの。 珍しく今日は上機嫌。 そして時間も場所も珍しく、昼休みの廊下で。 勿論、人は多い。 「・・・おい」 「何ですか〜?」 「・・もうちょっとTPOを考えて行動しろ」 明らかに周りの人間が2人を見ている。ざわざわしている。 一緒にいるコトはもともと多かった2人だが ココまで引っ付いているトコロは今まで全く見られなかったからだ。 「鳴海さんも人のコト言えないじゃないですかー」 「人が見てるだろ」 「鳴海さんだって今まで人前とか気にせず無理やり私に・・・」 「あー、判った。今まではスイマセンでした。だから今は離れろ」 「え〜」 実際にはともかく、周りからはどう見ても仲が良い2人にしか見えなかった。 その"周り"の中には浅月と亮子がいた。 「・・あの2人ってあんなに仲良かったっけ?」 「あー、何か付き合ってるらしいぜ」 「ふーん・・タイプとか正反対なのにね」 「ともかく人前でイチャ付くのはやめて欲しいよな・・」 「目の毒になるしね」 「や、俺は別にそこまで言ってないぞ・・」 「そう?でも判りやすく言うとそうだろ?」 「・・・・・・・・」 コイツってこんな怖い女だったっけ・・・とか思いつつ、 浅月は亮子から少し後退りしていたらしい。 だから、もう泣くな。 「・・・あんた今日おかしいぞ」 放課後でも歩にずーーーっとくっ付いてるひよの。 いくら部活中で人がいないからと言って長時間後ろから首に腕を巻かれるのは正直疲れる。 「えーそうですか〜?」 「何か無駄に機嫌良いし」 「まぁ私今幸せですからね〜♪うふふ〜v」 「・・・気色悪い」 「なっ!!!ヒドいですよ鳴海さん!!人がせっかく幸せに浸っているときに"気色悪い"とは何ですか!」 「だったらそろそろ放せ」 「理由になってませんよ!」 「・・・重いんだよ、あんた」 「なっ!!!」 確かにイスに座っている歩にひよのは全体重をかけていたと言ってもおかしくは無い。 しかし年頃の女の子が人に"重い"と言われて嬉しいワケが無い。 当然ひよのは怒る。 「何ですか!!いつも鳴海さんが私に引っ付いてくるばかりだから たまには私からと思ってやっていたのに!!」 「俺を変態みたいに言うな」 「もう判りましたよ!!鳴海さんは私と引っ付きたくないと言うんですね!なら離れますよ!!」 「そんなコト言ってないだろ!・・・って・・」 彼女は目に涙を溜めながら歩を見ていた。まっすぐに。 強がった顔で。 歩は彼女のこんな泣き顔はやっぱりキライ。 「・・泣いてんじゃねぇよ・・・バカ」 「な、泣いてなんかいませんよ!」 強がるひよの。そして彼女も歩にこんな泣き顔を見られるのがキライだった。 自分の弱いトコロなんて見られたくないから。 「・・じゃあ、泣いてないんだったらこっち来いよ」 「な、何でそんな・・」 「いいから、来い」 「・・・・・・・」 言われたまま、恐る恐る歩へ近付いてくひよの。 最終的には彼に腕を引っ張られて上に座る形になり、 彼が腕を回して後ろから抱きしめている状態になった。 「・・・俺、あんたが悲しくて泣いてる顔見るのイヤなんだよ」 「・・・・・・・・・」 「・・だから、もう泣くなよ。頼むから」 「・・そんなの、鳴海さんが悪いんじゃないですか。私と引っ付きたくないなら放して下さいよ!!」 彼女は抵抗を始めた。 が、彼は冷静にその抵抗をおさえていた。 「あんた、本当に俺がそう思ってると思ってるんだったら怒るぞ?」 「な、鳴海さんなんかが怒ったって・・・!」 「怒ったって?」 「・・・怒ったら、怖いです、ケド・・・でも!私はそう思いますよ!!」 「何でだよ」 「だって、普通引っ付きたいと思っている人に引っ付かれたら 放せって言わないじゃないですか!!」 「じゃああんたは俺がそうしているときに いつも放せやら何やら言っているがソレはイヤだからなのか?」 「ち、違いますケド・・」 黙ってしまうひよの。 実は今まで自分から歩に引っ付いたコトはあまり無かったので 今回のコトを拒絶されたと考えてしまったらしい。 まぁ、歩から考えてみれば迷惑な話で。 「・・確かに放せとは言ったがイヤとは言ってないだろ」 「・・・ゴメンなさい」 沈む気持ちと同時に恥ずかしくもなるひよの。 今思うと何てくだらない理由で泣きそうになっていたんだろうと思う。 「・・まぁ、結局はあんたは俺の言うコトを聞いてればいい話なんだけどな」 「な、何でそうなるんですか!!と言うか調子に乗って変なトコロ触らないで下さい!!!」 「足触ってるだけだろ」 「十分変なトコロじゃないですか!!!放してください!」 「でも、俺と引っ付くのはイヤじゃないんだろ?」 「うっ・・・・」 「イヤだったらあんな公衆の面前で首に腕回してきたりしないハズだろ?」 「っ〜!!!!」 くやしいくて仕方が無いと言う気持ちでいっぱいのひよの。 そんな状況でもイヤとは言えない自分に腹が立ってくる。 「ぁ、ちなみにこーゆーときは泣いてもいいからな」 「は?」 「俺はあんたのそーゆー泣き顔が一番スキだから」 「全然そんなコト言われても嬉しくありませんよ!!だから放して下さいってば!」 「(無視)そう言えばあんた何で今日は機嫌が良かったんだ?」 「へ?・・・ぁ・・アレはですね・・」 口ごもるひよの。 何か言いにくいコトらしい。 彼は勿論、言わせる。 「何だよ。早く言えよ」 「そ、ソレは・・・ですね」 「早く言わないと後ろのソレ、外すぞ?」 「ぇ、後ろ?・・・って!!!鳴海さんいつの間に服の中に手入れてるんですか!! しかも下着脱がそうとしているなんて不潔です!!」 「あんたが早く言えば済む話なんだよ」 「で、でも・・・・」 「外されたいなら別にいいが」 「い、イヤに決まってるじゃないですか!!」 「じゃあ言えって」 「・・・じゃあ耳貸して下さい」 「何で」 「小声じゃないと恥ずかしいからですよ!!」 2人しかいないのにそんなコト思うなんてあんた馬鹿だろ・・・ と言いたかった歩だがあえて言わずに耳を貸した。 そして彼女が彼に告げた。 「鳴海さんが前にちゃんと甘い言葉を言ってくれたからですよ・・」 そう言った後彼女の顔が赤くなっていた。 そんな彼女のコトがスキな彼もまた少し笑いながら彼女の耳元で話した。 「・・馬鹿だなあんたって」 「もう!だから言うのイヤだったんですよ!!」 「後ろのフック外されるよりは言った方が良かったんだろ?」 「当たり前じゃないですか!!!」 そして彼がまた少し笑いながら より一層彼女を愛しく思えたのは事実。 つづく。
あとがき。2004.12.12 ちょびっとだけ香亮。ホントちょびっとだけ。香亮と言えないぐらい。 歩さん黒いよ・・。またいつもの脅迫かよ・・。もう特技だよね。アレは。 ちなみにひよのが言った言葉を知りたい方は反転して見てくださいね〜。内容的にはお題11参照。 *お手数ですがメニューからお戻り下さい。