"男も家事が出来ないとダメだ"と言われる今の世の中。

"男尊女卑"とか"亭主関白"などの言葉もあまり聞かなくなった。

その点はとても良いコトだと思われる。


が。



「・・あんた本当に料理作ったコトあるのか?」
「失礼ですね!!それぐらいありますよ!」
「や、でもソレは・・」



現在、2人はひよのの家にいる。詳しく言えば台所。

何故いるのかと言うとひよのが突然帰り際に手料理を歩に食べさせたいと言ったからで。

勿論、歩は最初は拒否した。面倒だし、どんなのが出されるか判らないし。

しかしひよのが"鳴海さんが教えてくださればいいんですよ〜お願いですからー!"

と言いながら自分に珍しく抱きついてくるもんだから。

仕方なく連れて行かれた。嫌々。


だが歩の予想通りやはり制服の上にエプロンを着ている彼女は料理が得意ではなく。



「・・指がバンドエイドだらけのくせしてよく言えるな」
「む〜っ!!確かに私は料理が得意な方では無いですが作ったコトはありますよ!」
「・・・ちっとも威張れないだろ、ソレ」



傷だらけの彼女の指を見ながら歩はため息を付いた。

やはり女も家事が出来ないとダメな時代なのである。





























心配で目が離せなくなるだろ。





























「もうっ!!鳴海さん煩いですよ!黙ってて下さい!!」



先程から自分の後ろにいる歩が口を出すのがイヤらしい。

歩がひよのを手伝えるのであったら既に手伝っている。

だが、それさえも彼女は拒むため口しか出せない状態になっていた歩。



「口出すのも仕方無いだろ・・ソレは」
「だったら他の部屋で出来るまで待ってて下さいよ!」



や、そんなボロボロな手でそんなコト言われても・・



「・・心配で目が離せなくなるだろ、普通」
「鳴海さんは普通じゃないですから目離していいんです!ほら、あっち行ってて下さい!」
「・・・口出さないように努力する」
「・・そんなに目が離せないんですか」
「あんたに目が離せないと言うよりあんたが作るモノが気になって仕方がない」
「・・・・・・・・」



無言のまま彼女は作業を続けた。

"絶対自分で作ってやるっ!!"とか何とか思いながら。燃えている。


さっきまでカナリ酷いコトを言っていた歩だが彼女が作るモノが何かは既に判っている。

判ってはいるのだが・・その通りのモノが出されるとはあまりに思いにくい。

なので彼は台所にある適当なイスに座っているコトに。言われた通りに黙って。


すると今度はひよのが話しかけてきた。包丁を使っている彼女にそんな余裕は無いハズなのに。



「鳴海さん?」
「・・何だよ」
「何だかおとなしいですね」
「あんたが黙れって言ったんだろ」



確かにそうなんですケド、と彼女がつぶやいた。

ひよの的には歩が素直に自分の言うコトを聞くコトは珍しいコトであって。

ちょっとした違和感みたいなモノを感じていた。

なので話しかけたらしい。



「ぁ、判りました!」
「料理なんて出来るワケないってコトがか?」
「そうじゃありませんよ!!失礼ですね!鳴海さんがおとなしいワケがですよ!」



そう言った彼女は歩の方にビシっと体も包丁も向けて、



「エプロン姿のひよのちゃんにドキドキしているんでしょう!?」



と、キラキラ目で元気に言い放った。


一方、歩の反応は



「・・・包丁をこっちに向けるな。危ないだろ」



と、少し間を空けたあと普段通り冷静に言った。

多分、呆れている部分もあると思われる。

そんな歩にひよのは抗議する。



「もうっ!ノリが悪いですね!!わざわざしまってあったエプロンを持ってきてあげたんですよ!?」
「どうでもいいから包丁を持ったまま暴れるな。以上」
「あーっ!!話を強制終了させましたね!!ズルいですよ!」
「・・無駄口たたいてないで早く作れよ。カレーなんかすぐ作れるだろ」
「あれ?判っちゃいましたか?」
「材料見ればすぐ判る」
「ぁー・・そうですねぇ〜そういえば」



そう言いながらひよのは作業に戻った。

歩的にはやれやれと言いたいトコロ。


かと言ってまだまだひよのの作業は終わりそうにない。はっきり言ってヒマだ。

そこで彼は何故かそぉーっとひよのに近付いて行って・・



「きゃぁ!?って・・・鳴海さん!」



彼女に後ろから抱きついた。ヒマだったから、というそんな理由で。

ひよのからしたら迷惑な話。なので当然怒る。



「いきなり何してるんですか!!早くコレ作れって言ったのはあなたでしょう!?」
「あんたが意識しろって言ったから仕方なく意識してやった」
「意識・・?」
「エプロン」
「あぁー・・って!何でそんな理由でこんなコトになるんですか!!」



確かに理由に全くなっていない。

本当は別に意識もしていない。ただ、ヒマだったから。


目の前にあるおもちゃをいじりたくなるような、そんな子供っぽい感覚を持っただけ。

彼女に言ったら怒るだろうケド。



「なぁーるぅーみぃーさ〜ん?」
「何だよ」
「放して下さいね?と言うか手を変なトコロに移動させないで下さいね?」
「・・・さぁ?」
「もうっ!料理出来ないじゃないですか!」



自分のスカートとエプロンの間に入ってきた歩の手を払いながらひよのはそう言った。



「家に誘ったのはあんただし?」
「そんな理由で誘ったワケではありません。ほら、邪魔ですよ!」
「・・あんたさぁ」
「何ですか!」
「俺がそのつもりで来てたらどうしてたんだよ」
「知りませんよそんなの。・・まぁ、あなたの思い通りにコトが何でも進むと思ってたら大間違いですよ」



そう言いながら歩からふっと離れた。今日のひよのは少し強い感じがする。

どうしてもこの作業をやり遂げたい様子。何故かは判らないが。


そこで彼は訊ねた。



「・・何でそんなに作りたいんだよ」
「え?んー・・何か、憧れるじゃないですか」
「何が」



彼女の傍にいるのに気持ちはよく判らない。

だから問うしかない。距離は近いのに。

ひよのはこう言った。



「彼女が彼氏さんに料理してあげるのって。だからです」
「・・・・・・・・」
「ぁ、今"迷惑な話だ"とか思ったでしょう?」



顔は見えない。彼女は頑張って料理をしているから。

でも、きっとあの笑顔でそう言っているんだと思う。


何かがやるせない。だから、また適当なイスに戻った。黙って。

そして呟いた。



「・・全然」
「え?」
「何でもないからあんたはさっさとソレ終わらせろ」
「むー、何が全然なんですかー」
「あんたの料理なんか全然楽しみじゃないって言ってるんだ」
「何ですかそれー!!!やっとおとなしくなったと思ったらそんな失礼発言してー!!」
「煩い。黙れ」



歩ははぁーっとため息を付きながら机に突っ伏した。

本当に彼女は心配で目が離せない。色々と。

これからもこんなカンジなのかと思うとため息が出て仕方が無い。


でも、きっと自分は彼女が可愛くて仕方が無いからそう思うのだと思う。

・・・そんなコトを思った彼はまたため息を付いた。









――――おまけ。

ひよのの料理が何時間かかかってやっと出来た。


「・・何でこんなに時間がかかるんだよ。カレーごときに」
「まぁまぁそんなコトは気にせずに!味は大丈夫だと思われるので!」
「カレーで不味いのを作るのはちょっとしたコツがいると思うんだが」
「大丈夫ですってば!ほら、あーん」
「・・は?」


彼女はスプーンを自分の口元にいつの間にか持ってきていた。

多分、やろうと思っているコトはアレ。


「コレもひよのちゃんの憧れの1つです。どうぞ!」
「・・・・・・・・・・」


彼がその行為を受け止めたかは謎。


つづく。


あとがき。2005.1.14 料理させてみました、ひよのさんに。 ちなみに歩さんの"全然"とは"全然迷惑じゃない"と言う意味です。 判ってもらえたでしょうか?つーかあとがきが無くても判ってもらえるような文を 書かなくちゃいけないんですケドねーホントは。 *お手数ですがメニューからお戻り下さい。